ちょんと葉先を触ると葉を閉じ茎を倒してしまうオジギソウ。
しばらくして見てみるとまた元通りシャンと葉を広げています。
そしてまたちょん。植物とは思えないほどの敏しょうさに、幼かった私はこの植物が楽しくて仕方がありませんでした。
オジギソウとの出会いは母方の祖父母宅でした。
草花が大好きだった祖父は玄関へのアプローチ部分にアサガオやホウセンカなどなじみ深い花々をこれでもかと沢山咲かせていました。
色とりどりで明るいイメージだったのを覚えています。私たち家族の住む場所から祖父母宅までは車で15分ほど。
祖父母もよく家に遊びに来たけれど、私たち家族もよく遊びに行きました。
祖父は武道具を作る職人でした。若い頃京都に修行に出て学び、その技術を地元熊本に持ち帰ったと聞いています。
戦争を経験した年代ですから、きっと語れないような苦しみもあっただろうと今は想像しますが、当時小さかった私には祖父はただただ優しい大好きなおじいちゃんでした。
あるとき、祖父にアサガオの根元にある植物をさわるよう促されました。
華やかさはなく、細く、どちらかというと貧疎な雑草に見えました。
そしてちょんとやってみたときの衝撃たるや!「何これっ?!何?何??」いっぺんに私はオジギソウのとりこになりました。
時は流れ私は母になりました。
小さい子どもたち3人の育児に追われながら熊本市のアパートで暮らしていた頃は、玄関先の小さなスペースに寄せ植えの花鉢を数個置いていました。
植え替え時期がきたその日、いつものようにお店に苗を買いに行くと、そこには懐かしのあのオジギソウがいたのです。
祖父は私が小学5年生のときに他界したので、数十年ぶりの再開。
迷わず購入して持ち帰ると、今度は私が子どもたちを促しました。
言われるがまま、ちょんと触れる子どもたち。たちまちに目をまん丸くして驚き、全ての葉が閉じ、茎が倒れてしまうまで触りました。
その姿が可愛くてたまらなくて、ああ、祖父は私たち孫に対してこんな気持ちを抱いていたんだろうなぁと嬉しくなりました。
7年前に引っ越してきた今の家では、玄関を出てすぐのところに既に根付いたオジギソウがいます。
温かくなると毎年顔を出し、葉を広げ、ホワホワした紫の花を咲かせてくれます。中学生になった長男次男が触る様子はもうあまり見かけませんが、
小学4年生の長女はまだ楽しそうにわしゃわしゃやっています。
峰松菜穂子