長男の家出

今から6年前、小学3年生だった長男の話。

あれは9月のとある日曜日、原因が何だったのかさえ既に忘れてしまいましたが、おそらく毎日のように繰り返される兄弟げんかを夫に注意されてのことだったと思います。

長男は初めての家出を経験しました。
長男は頑固で私も頑固、夫も頑固だから、まぁ仕方ない。

言い出したらもう「負けるもんか!」って態度でどっちが余計に意地っ張りかの短期決戦です。

そしてその日は夫が怒った。「そんな考えなら出て行けー!!」「わかった、出て行く」と、すまし顔の長男。
自転車であれよあれよと何処かに消えて行きました。

行く当てはおおよそ見当がついてます。

子どもの少ないこの地域、きっと次男の友達の家でしょう。
夫は「いちいち相手にせんでよか、たまには頭冷やすといい」と言いながら、用事もないのに私と次男と長女を車に乗せ出掛けました。

私も長男の態度には腹を立てていましたが、初めて行き先を告げずに家を出て行ったのでハラハラ。
「大丈夫かなぁ、帰ってこらすかなぁ、泣いたりしとらんかなぁ」所在無く過ごしていると、夫は「大丈夫って。どうせHくん(次男の友達)の家にいるって」。

そんな矢先Hくんのお母さんからのメール!「うちにいますよ~」「やっぱり」私と夫は顔を見合わせました。

事情をメールで説明して、「私たちももう帰るから長男も帰るように言って下さい」とお願いし、ひとまず我が家で合流しました。
すると長男、まだ反省の色がない!!夫はまたまた怒り心頭!長男再び自転車で家を出る。

さぁて今度はどちらまで?1時間ほどして、今度はさっきとうって変わってしおらしい態度で帰ってきた長男は夫に謝ると、最寄り駅の駅舎カフェに行っていたと言います。
そこのオーナーさんには、前にも子どもたちと将棋をしたりオセロをしたりと遊んで頂いたことがありました。

長男によると、駅に着くなり「家出してきた」と報告。しょんぼりしながら話を聞いてもらっていると、何かスイーツがサービスされたそうです。

長男はお財布から「じゃ、これで」と、たまたまおばあちゃんにもらっていた千円札を出すけれど、「いらんいらん」とオーナーさん。「いえいえ」と長男。「そんなに言うなら」と千円札を預かったオーナーさんは「はい、おつり」と五百円玉2枚を長男に手渡したそうです。

しっかり話を聞いてもらい、諭されて、心も落ち着き家に帰って来たというわけです。

地域のあたたかさを感じる出来事でした。

峰松菜穂子

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