昔程ではないにしろ、私たちの何気ない日常の暮らし中には、今でもあらゆる植物を目にしたり聞いたりすることができます。赤飯の上の南天の葉、お寿司を買った時についてくるバラン、カキの葉寿司、桜餅や団子などを包んでいる葉、家紋、お正月で作るしめ縄、それを彩る植物 等々。ただの飾り、模様だと思っている方も多いかもしれません。
それぞれにはきちんとした意味があります。
例えば、南天の葉は庭や道端に植えられ日ごろから目にする事ができます。冬には白や赤の実を沢山つけるので目に留まる方もいるでしょう。南天は「難を転ずる」縁起のいい植物として用いられてきました。そんな南天は毒消しの意味もあるのです。チアン水素がごく微量発生してご飯が腐敗しないようにしているのだそうです。
バランは「葉蘭(ハラン)」のことです。常緑で葉が大きく、美しく、香りがいいので古くから日本料理の飾りなどの仕切りとして用いられてきました。関東では笹の葉が多いようです。
食材に利用されているのは、主に殺菌効果や、防腐作用、抗酸化作用を兼ねています。昔は現代のように冷蔵庫もなかったので、食材の保存の仕方には本当に感心します。
何万種類ある家紋の中にも植物の生態にちなんで、意味を見出したり、由来にしていたものも数多くあるようです。例えば、片喰(カタバミ)紋。カタバミは小さなハートの葉をしていて、黄色の5枚の花弁の小さなお花です。道端や公園など身近にあるので、1度は見た事があるのではないでしょうか。これは一度根付くとなかなか絶えず、払っても新しい芽を出すことから「子孫繁栄」の意味があり、武将たちに大変好まれたそうです。また、
茗荷紋は”冥加”に通じ、神仏のご加護を受けることに通じると考えられたことから用いられたそうです。他にも、沢瀉紋や橘紋、麻紋、牡丹紋と植物の種類は100種以上あります。
今は南天の葉や葉蘭がプラスチックになっていたり、本来の意味として使われていることも少なくなってきています。そのうち葉の名前や意味さえ忘れ去られてしまうのかと思うと、自然との繋がりがまた一つなくなるようで寂しくなります。
先代の方たちが今の子供たちやこれから生まれる子供たちにきちんと意味を伝え、自然と人とが一緒に暮らしているということを身近な出来事から五感を使い、感じていって欲しいと思います。
工藤 トモヨ